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これから書く話は、俺が祖父の家へ遊びに行った時の話である。
俺は毎年夏休みになると、祖父の田舎へ泊まり掛けで遊びに来ていた。
大抵、大学生ぐらいになると、何もない田舎などには興味をなくして足が遠のくものだが、俺は毎年楽しみにしていた。なぜなら、祖父の村の夏祭りがユニークで面白いものだったからだ。
その祭は山のふもとの神社で行われ、夜になると皆が浴衣を着て集まってくる。ただし、男性が着てくる浴衣は普通のものではなく、通常よりも丈が長いものである。
そして、男達はその余った裾を後ろにズルズルと引きずりながら、縁日の開かれている神社を歩きまわるのだ。
その男達の目的はただ一つ、女性に自分の裾を踏ませることである
これは、祭の夜、女性に着物の裾を踏まれると、必ずその女性と結ばれるという言い伝えがあるからだ。
俺はこの祭のために毎年祖父の家に来ているようなものであり、そして、その夏も俺は張りきって祭りへと出かけた。
夜ともなると普段は全く通行がなくなる田んぼ道、しかし、その夜ばかりは車も人もかなりの往来があった。
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