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姿見の前、白蘭は隊服ではなく白のスラックスに黒いシャツ、白のベストとネクタイ、そして手には白いジャケットという、普段とは違う姿で居た。
今日を特別な日にする為だ。
急ぐ理由は簡単、急がなければ最も信頼する部下や黒い方の連中に、彼をとられかねないと感じたからである。
彼、六道骸を。
「うん、バッチリ。…骸君は…まだかな」
ちらりと時計を見遣り時間経過を気にしてみる。
骸は今、女人達により身嗜みを整えられている。
しかし、それが異様に遅い。
「まだなのかな…」
予約したレストランの時間が刻々と迫る。
ソファーに腰を沈めマシュマロを食べても、そわそわと時間と骸を気にするだけだ。
と、そんなとき。
扉の外から女人と彼の声がするではないか。
その会話を聞いてしまえば、計らずも笑みを零してしまう。
どうやら彼は今、彼であって彼でないらしい(女人はしっかりと遊んでくれたみたい)。
耐え切れず扉を開ければ、そこには美しい彼がいた。
細い腰を引き立たせるような、すっきりとした紅いドレスに身を包み、顔には化粧を施されて、髪は綺麗に結い上げられていて。
「…可愛い…」
「…、…」
無意識に呟いてしまう。
いつもとは違う彼に、僕の理性はショート寸前(、なんてね)。
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