愛毒受胎

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      寝台の上で青年は考えた、先程の男の言葉を。 されどいくら考えようと結論等ない。 そして余りにも不可解過ぎるのだ。   (産んでよ、)(僕の子供)   男の己には生物学上不可能であり、六道眼の使えぬ今、己の身体を作り替えることも不可能である、一体どうしろと。 白蘭のただのノリなのか、それとも本気なのかとも知れぬ言葉に骸はぐるぐると思考を巡らせる。 されど行き着く答えは全て不可能。 だが明らかに、身体の変化を骸は感じていた。 吐き気や頭痛、身体の怠さを覚え、まさか、と思い柄にも無く白蘭の言葉を思案しているのである。   「どう、骸君。調子は?」 「…吐き気がします」   ぐったりとしたまま、指一本も動かさず骸は答える。 白蘭はそれを見て愉快そうにふふふと笑った。   「あのね、骸君。君、昨日媚薬飲んだでしょ。あれ、懐妊薬でもあったんだ」 「…?」 「つまり、擬似卵巣を骸君のお腹の中に創る薬」   それはそれは素晴らしいほど綺麗な笑顔を浮かべた白蘭が、笑顔に見合わぬ言葉を放ち骸の腹を指で辿る。 一方の骸は、理解しがたいとばかりに睨みを利かせた。 しかしそれはただ認めたくないという行動にしかならず、自分でも思い当たる節は沢山あった。   「昨日沢山沢山、やったでしょ?種を植えるためにいつもより沢山君にあげたの」 「う、そ」 「でもほら、実際に僕の植えた種は芽吹いたんだよ」 「嫌…、…だ」   (普段澄ました君の表情が、)(恐怖に歪む。)(嗚呼なんて愉快なの!)(でもこれはね、)   「ごめんね骸君、」 「僕は君が好きなんだ」     だから縛り付けるの。     (20080615) 逃げられないように、変わらない事実という鎖を植え付けて。              
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