その気高き黒猫に首輪を!

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  入江正一は不可解そうにお付きの女人に尋ねた。 内容は我が何故上司である白蘭が最近まともに連絡を寄越さないかと謂うこと。 しかし女人はくすくすと笑うだけで、正一は尚更理解しがたいと心底ため息を零した。 そんな青年に女人は笑みを浮かべたまま言葉を紡ぐ。 白蘭様は最近飼い始めた猫に夢中なんですわ、と。 謎が謎を呼ぶとは正にこのことだ、正一は諦めも含まれた本日何度目かのため息を零しながら微かな興味をその胸に抱いたのだった。   それは時同じくしてミルフィオーレ本部最上階。 白蘭のプライベートルームとされたその広すぎる一室に、彼が最近飼い始めたという"猫"は居た。 しなやかな肢体は柔らかな弾力を持つベットに投げ出され、流れる黒い毛並みは光りを帯びて澄んだ深海をも思わせる。 だがそれは愛玩動物と親しまれる猫ではなく、ボンゴレファミリーの霧の守護者六道骸、その男であった。   「骸君、いつまで寝てるつもり」 「…」   今骸は狸寝入りを決め込んでいる。 何故なら今起きると面倒な事になるからだ。 そう、それこそ愛玩動物として扱われる、そう骸は無意識に直感したのだ。 しかし結果は変わらない、白蘭はおもむろに骸上に馬なりになってその細くしなやかな肢体に荒々しい愛撫を施し始めた。 悲しきかな、骸はそれすらも敏感に感じてしまう。   「ゃ、め」 「あ、起きた」   おそよう骸君、白蘭は不機嫌そうに言い放った。 しかし骸は挑発するような笑みを浮かべて白蘭を軽蔑するような眼差しを向ける。 一層白蘭の纏うオーラは不機嫌なものにと染まる。   「ほんと骸君は黒猫だね。気高いし生意気だし自由だし」 「…っ」   不意に骸の細い首筋に白蘭の綺麗な両手が宛てられ、微かな力が込められる。   「黒猫はすぐ脱走しちゃうから、」 「っかは…っ」 「これをプレゼントしてあげる」   白蘭の手が離れる、と同時にちりんとなんとも可愛いらしい鈴の音が耳に届く。 彼は笑いながらよく似合ってるね、と笑った。 首元に恐る恐る触れてみる、と、案の定あった。 小さな鈴の着いた首輪が。 骸は絶望の淵に立たされた気がした。     その気高き黒猫に首輪を! (逃げられないように、)(オレの色の首輪をつけて、)(飼い主を判らせるんだ!)       (20080722)人権無視された骸と独占欲強い白蘭        
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