あしもとに、虹

3/4
前へ
/19ページ
次へ
そとの空気は、まだすこしぬれたかんじがした。 ぼくは雨上がりのだいすきなにおいをむねいっぱいにすいこんだ。 いっしょうけんめい上のほうにうでをのばして、お母さんの手をにぎってあるいた。 ゆうくん、また大きくなったねって、お母さんは笑いながら言った。 しばらくあるいていると、   「ゆうくん、下向いてごらん」   って、お母さんが言ったから、ぼくは、じめんをながめてみた。 雨でぐちゃぐちゃになったじめんにできたみずたまりには、いろとりどりのひかりと、あおい空がうつっていたんだ。   「お母さん、このきれいなの、なあに?」   「虹、っていうんだよ」   にじ……? にじって、テレビでみたことがあるような気がする。 テレビでみたあれは、キャンディみたいでなんだかおいしそうだった。 もしかしたら、これも食べられるのかな。 ぼくはそんなことをおもって、みずたまりのなかに手をいれて、お母さんににじをわたしてあげようとおもったけど、ぼくはにじをつかめなかった。 みずたまりのなかの茶色い土がもやもやと動いて、にじをどこかへ消してしまったんだ。   「あれ……?」  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加