5人が本棚に入れています
本棚に追加
そとの空気は、まだすこしぬれたかんじがした。
ぼくは雨上がりのだいすきなにおいをむねいっぱいにすいこんだ。
いっしょうけんめい上のほうにうでをのばして、お母さんの手をにぎってあるいた。
ゆうくん、また大きくなったねって、お母さんは笑いながら言った。
しばらくあるいていると、
「ゆうくん、下向いてごらん」
って、お母さんが言ったから、ぼくは、じめんをながめてみた。
雨でぐちゃぐちゃになったじめんにできたみずたまりには、いろとりどりのひかりと、あおい空がうつっていたんだ。
「お母さん、このきれいなの、なあに?」
「虹、っていうんだよ」
にじ……?
にじって、テレビでみたことがあるような気がする。
テレビでみたあれは、キャンディみたいでなんだかおいしそうだった。
もしかしたら、これも食べられるのかな。
ぼくはそんなことをおもって、みずたまりのなかに手をいれて、お母さんににじをわたしてあげようとおもったけど、ぼくはにじをつかめなかった。
みずたまりのなかの茶色い土がもやもやと動いて、にじをどこかへ消してしまったんだ。
「あれ……?」
最初のコメントを投稿しよう!