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嗚呼、朝焼けとは。
何故時にこんなにも毒々しい色をしているのだろう。
同じ太陽であるはずなのに、先程目にした夕焼けとは全く違う何かに見える──……。
心を浄化して行く光。
心に毒を注ぐ光。
純粋な空から去って行く光。
純粋だった空を浸蝕して行く光。
──嗚呼、吐き気がする。
吐き気がする程美しい。
狂った私には尚更、あの蛍光染料のような美しさが魅惑的に思えた。
彼も、そう思うだろうか。
嫌いなら壊してくれと、確かにそう口にした彼も。
この空の毒々しさを、美しいと、そう思うのだろうか──……。
胃の奥から、何かが込み上げて来た。
……きっと、彼から貰った毒だろう。
私は嘔吐した。
毒は止めどなく溢れて私の手足を汚した。何も食べていなかったはずなのに内容物は止まることを知らない。
私は吐き続けた。溺れるほど吐き続けた。
吐いたら、綺麗になるのだろうか。
毒に染まり、狂った私は──……。
……吐いて吐いて流石にもう胃の中が空になった頃。
何かが足りないと、そう思い始めた。
──空を、眺める。
朝焼けの色は更に、毒々しさを増していた。
嗚呼、満たされて行く。 私のこころ、満たされて行く。
甘く美しい毒に、蝕まれて行く──。
私は再び携帯を手に取り、電話帳を開いた。
──彼の電話番号を表示し、決定ボタンを、押した。
「ごめんなさい……私、どうかしてた。本当にごめん……お願い…離さないで……どうか私を見捨てないで……貴方といられるなら私……何でもするから──」
甘い甘い、毒。
既に手遅れだった。
吐くなんて、無理だった。
きっと、このまま。
私達は愚かなまま。
甘い甘い、毒に侵されて、
永遠に、堕ちて行くだけ────。
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