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夜中に家を出て来た。
ふらふらと、意識もはっきりしないまま、私は街中を彷徨っている。雨が降り続くというのに、傘も差さぬまま。
最早私が出ていったことに気が付いた者はいないようだ。
──こんな人間を必要とする者など何処にもいない。
同じクラスの生徒は誰も私に話し掛けてこようとはしない。私を産んだあの人は、私がいない所でその存在の迷惑さを話していた。
この世界から消えてしまいたいと、心の底からそう願ったが、私には死に辿り着けるほどの痛みを受ける勇気もなかった。
雨に撃たれて流されて、ついでに涙を流していれば、そのうち私の身体も流れて地面に溶けて消えるだろうか。
そんなことを考えながら、夜通し街を歩いていた。
……いつの間にか空は白んで、雨は上がっていた。
──ほら、こんな風に。
私の知らない所で、夜は明けてゆくではないか。私の知らないうちに、世界は回ってゆくではないか。私ひとりが死んだところで世界の目にも留まりはしない。
……絶望を唱えながら延々と歩き続け、私は知らないうちに泥だらけな地面の上に立っていた。
下を向けばいくつもの水溜まりが出来て空を映し出している。その中のひとつに、七色の線が並んでいた。
涙の後には虹が出る──。
そんなことをほざいたのは、何処のどいつなんだ。
……私は水溜まりを踏み潰し、ぐしゃぐしゃに掻き回した。
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