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どうして日本人はここまで死に無頓着なのであろう。私はボーッとしながら考えた。
告別式が行われているのに、いまだ“死んだ”という実感がわかない。
――わくはずが無い。私はここに居るもの。…ネェ、コレハ夢ナノ?
ほら、あの継母(ままはは)の様なお母さんが泣いている。
「実里、実里ぉ…」
あの勝気で、女王様の様な母が。
――泣カナイデ―。
私の目からも涙が流れる。
しかし、その涙は、温かくも、冷たくもない唯の無機質な物だった。
『お母さ…ん…』
しかし、私の声は誰にも届かない。空気さえ、震わせない。とっても悲しくて、寂しくて…苦しくって…発狂して、しまいそうだ。
とりあえず、お母さんの隣に寄り添った。
本人は気付かないけれど、不器用でも愛してくれた母の隣に居たかった。
「ねぇ、」
後方の近所席から、良く遊びに来ていた幼稚園児の幸(こう)君の声がする。
「お母さん、リセットボタンは?お姉ちゃん、日記つけてたもん、そこから始めれば良いでしょ?」
幸君のお母さんは“静かにしなさい”とだけ言って聞かせた。
「じゃあ復活の呪文は?お薬は??ねぇ、僕お姉ちゃんと遊びたい」
幸君は、幸君のお母さんの方を小さな手で揺らした。
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