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約15分後、5時半。 私は地元の教会に着いた。 少し小さな方の教会だ。 だが、ほのぼのとしていて人柄の良い人ばかりが集まる。 「牧師様、来ました」 「いらっしゃい、命(ミコト)ちゃん」 私とあまり変わらないほどの女性が居た。彼女が牧師様だ。 牧師様は私を見るなり、にっこりと笑った。 私の名は神楽(カグラ)命。 罰当たりな名前だ、と自分でも思う。 牧師様はいつも、こんな暖かい笑顔で迎えて下さる。 私はいつも、ここで礼拝してから仕事に向かう。 ずっと続けてきた、私の日課。 自分で買った聖書や讃美歌の本、詩篇の本などを持って、そこに行く。 「お祈りしてきますね」 言って私は礼拝者に入る。 この時間には誰も居ない。 私は毎朝こうして、誰も居ない時間帯に来る。 そして神の前、一人で手を組んだ。 「…主よ…今日という一日も、私に変わらぬ日常を与え賜え」 呟くのは、たったこれだけ。 それからもしばらくは祈りを続ける。 10分ほどして、私は立ち上がった。 そろそろ他の人も来る頃だ。
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