1話目 真夏の国

5/20
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
城内に入ると、キノは直ぐに、水色の日傘をさし、日傘を肩と首で抑えエルメスを日陰に運ぶ。 城内は色とりどりの日傘であふれていた。 しかし、キノに話しかけようとする人は誰もいない。 寄り付きさえもしない。 「暑い………」 エルメスが呟く。 「日陰にいても汗が垂れるよ」 キノは手の甲で額の汗を拭う。 「キノ、日焼け止めクリーム、塗らなくていいの?」 「……忘れてた」 キノが大急ぎでビンを開けると、どこかの国で嗅いだことのあるような海の匂いがした。 日焼け止めクリームを肌の露出した所に塗り付ける。 「エルメスも塗る?」 「錆びるよ」 即答するエルメス。 「じゃあ…いいや…」 キノは言った。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!