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「おかーさん。旅人さんが来たよー」
男の子が家の玄関で叫ぶ。
「あら、珍し…」
子供の母親らしき女性の顔がエルメスを見たとたん顔を強張ったのをキノは見逃さない。
「旅人さん。いらっしゃいませ。どうぞ、こちらの部屋へ」
キノとエルメスが入った部屋は、ベッドのスプリングが最高で、熱いシャワーの出る一番北側。
「では、ごゆるりと」
ドアが閉まる。
キノはスプリングが良くきいているベッドに乗っかる。
「初めて、北側の部屋に入ったよ。普段なら南側か東側なのに」
キノが呟く。
「暑い所だと、涼しい北側に案内する事もあるみたいだよ」
「へぇー」
「それにしても、変だね。この国。誰一人、話し掛けてこないよ」
「そうだね、エルメス。……取り敢えずシャワー浴びる」
「それがいいよ。キノの体、凄く日焼け止め臭い」
キノはいつも以上に長くシャワーを浴びた。
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