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自分が受け継いだ占いには向かない。
本当に占いが必要な人しか占えない。
悩み苦しみ、困難に立ち向かおうとする者に、道標を示すのが、自分の占い、いや、代々受け継いだ占いだ。
先代から引き継いで三年が経つ。
その間に占い師としての名声は拡がっていた。
…先代を越える外れ知らずの占い師…と
占いの的中率の高さには定評がある。だから、ちまちました占いなどせずとも、食べていけるだけの稼ぎもある。
自分から提示しなくとも、相手が占いに納得すれば、見合うだけの代金を払ってくれる。
そして、払われなかったことは一度も無い。
だから、噂が拡がり、無用の輩を呼び寄せることにもなる。
〈客が着いたようだぞ〉
木菟が言うのと同時に、扉を叩く音が響いた。
「はぁ~」
思い切りため息をついて起き上がると、伸ばしっぱなしでうっとおしくなりつつある黒髪を掻きむしり寝台から降りた。
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