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階段を降りた正面に玄関がある。とりあえず、扉の小窓を開けて訪問者を確認する。
自分よりも年上だと思われる妙に落ち着いた雰囲気の…一瞬、女性かと思う中性的な…青年だった。
一目見て勘に引っかかりを感じたのは何故だろう……
「どなた?御用向きは?」
内心の戸惑いを隠しつつ、自分の中では丁寧な方の口調で訊く。
これで相手の出方を見れば、用向きの大方の察しはつく。
相手は薄茶の瞳に微かに驚きを過らせ、数瞬の間を置いてから口を開いた。
「私はカルンと申します。行方探しをお願いしたい」
柔らかい容姿に似合わず、低めの穏やかな声がそう告げる。
依頼内容は、まあまあ受けても良さそうなものだ。
「わかりました。中へどうぞ」
開錠し、扉を開ける。
カルンは、軽く一礼してからゆっくりと入ってきた。
間近に見て、男性の割りには小柄だと分かる。自分が周囲の人から見れば長身であることを差し引いても小さかった。
玄関脇の扉を開けて、招き入れる。
その部屋は占い部屋に通じる部屋で、応接間兼待合室として使っていた。
「座って、待ってて」
と言い置いて部屋を出る。
依頼から察するに、話は長引きそうだから、お茶を準備することにした。
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