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トールの街にある、エレバニア通信という全人口の三分の二は読むといわれる雑誌にも掲載されるほど、有名なレストラン『ラルシャン』に着いた二人は席に着く。
と、エミレス達が来たことに気付いたのか厨房の方からコック帽をかぶった男の人が出てきた。
「おぉ、エミレスちゃんにリックス君、いらっしゃい。今日はお食事デートかい?」
優しいおじさんという表現がぴったりな、少し小太りの男の人はそう聞くとエミレスはあわてて否定する。
「そ、そんなわけないでしょ!もうラスナーさんからかわないでよ!」
そういうとラスナー・クリプトンは店内に響き渡るほどの豪快な笑い声を上げた。
「すまないすまない。で?何か食べていくのかい?」
ようやく笑いを収めたラスナーが聞くと、エミレスはうれしそうに大きく頷きメニューを手に取る。
「今日は久しぶりの外食だから、おいしいものたくさん食べようっと!」
楽しそうにメニューを眺めるエミレスがそういうのを聞いてリックスは心配そうな顔で、
「あんまり食べ過ぎないようにね」
と念を押す。
がしかしエミレスは、はぁい、と聞いているのか聞いていないのか分からないような返事をする。
どうやら目線はもうメニューに釘づけらしい。
リックスはまたいつものことか、と呆れ返ってしまっていた。
「じゃあ私から頼むわね。えっと、アイトレスリゾットと、海老とムール貝のパエリアと、コールスローサラダと、シェフのオススメと、イチゴパフェにしようかな」
この時のラスナーの驚いた顔を知るものは少ない。
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