第1章

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 今日は皿洗いのバイトだ。ガツガツと運び込まれる皿や鍋を見ると、人が洗ってくれるからって何枚も皿使いやがってといちゃもん付けたくなる。  たまにコックがフライパンを冷やさずに持ってきて、知らずに掴むと皮膚が溶けそうな程熱い。後ろから刺したくなるくらいだ。  着ていく服を決めようと、タンスを開けたら『粉雪』の着メロが部屋中に鳴り響いている。 「はいはい、今出ますよぉ」と呑気に答えながら携帯の画面を見る。バイト先から電話だ。  通話ボタンを押す。 「はい、もしもし」 『もしもし、中山くんかい?』  受話器から愉快な声が聞こえる。この愉快な声の持ち主はバイト先のレストランの中でもバイトの事を理解しているおじさんだ。 「はいそうですが」 『いやあ、私のミスでね、今日バイト4人もシフト入れちゃってさ、最近中山くん休み少なかったから今日休んでもいいよ』 「そうですか。じゃあお言葉に甘えて休ませてもらいます」 『はい、じゃあお疲れ様ぁ』 「はい」
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