五年目の正直

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「ううぅ……」 情けない声を出しているのはアラウである。 人型になった彼は、今はちゃんと服を着ている。 成人を表す黒い絹に、飾り紐を腰に巻いた格好だ。 人型のアラウはやんちゃな少年だった。 手足はよく日に焼け、しなやかな筋肉がついている。 赤毛はあちこちに跳ね、金の瞳は大きくて良く動く。 アラウもキイも魔狼族である。 男は狼と人の二つの姿を持ち、女を護る。 女は狼にはなれないが、神々しい美しさを誇る。 魔狼族の住む森は神聖な場所とされ、人間たちは立ち入らない。
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