七色の月

3/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
咲耶は、持っていた鍬を振り上げそれに向かう。 『うわあぁぁぁぁっ!』大声をあげ、恐怖を振り払いながら、黒い物体へ突進する。 力の限り鍬を振り降ろすと、黒い物体は、真っ二つに割れ動きが止まった。辺りは静まり返り、我に帰った。 『さ、咲耶!』慌てて駆け寄る父母を、受け止めながら、今自分がした事に怖さを感じ震えた。 『母さん、私はみんなを守る気持ちだけで一杯で、気付けばあの怪物に歯向かっていました。』震える咲耶を、きつく抱き締め『よく頑張りましたよ。でも、あなたを守るのは、父さん、母さんの役目なのです。もう、無茶はやめてくださいね』母の言葉に、うなずく咲耶だった。 ゴォーゴゴー再び地鳴りが響くと、咲耶の頭上で声がする。 『お前か!お前か!』低くかすれた、しかししっかりと耳に届くこの声は、頭上ではなく、咲耶の脳裏に直接木霊する。 (父や母には聞こえていないのか) まだ、自分を抱き締めている父母の腕を解き、立ち上がると、鋭く光る黒い物体の目を見据える。 『なぜ私を呼ぶ!今すぐ立ち去れ!』咲耶は、二つに別れてこちらを睨む黒い物体へ叫ぶ。 『お前が…お前を殺らねば…我らが滅ぶ。』
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!