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カサッ…カサッ…ザザザァ…。咲那は、村を離れて数日間、草木が鬱蒼と茂る深い森を彷徨っていた。
「喉が渇いた…」口にするのは、雨水ばかりで力も出ない。
しばらく歩くと、ブナの大木がそびえ立つ湖に出た。 大木にもたれながら、深くため息をつく。
「青の卍…。私の中には、何があるのか…。」
しばらくウトウト眠る咲那の耳に、ガサガサッ…ドドーン!
けたたましい音と共に、目の前の何本もの巨木が、赤い光になぎ倒されていく。
「何だ!あれは!」驚き、大木に身を隠す咲那の前に現われたのは、年の頃は、咲那とそう変わらない少女だ。いや、一点違うのは、彼女は豪華絢爛の着物姿なのだ。咲那が、釘付けになるのも無理はない。
少女は、この森林にそぐわない、豪華な着物を纏い、念仏を唱えながらこちらに近付いてくる。
咲那は、人間には違いないと感じ、ゆっくり身を伸ばす。
少女は、咲那に気付くと「あなた!何があろうとそこにおるのですよ!」
少女はそう告げると、また森林の奥を見据える。
「来たようですわ」
その言葉を合図に、何かがこちらに近付いてくる。
「鬼?」呟く咲那に、少女はうなずく。
やがてその物は姿を表す。
なんとも言い難い、形相の鬼…いや般若だ。
「烈火っ!」少女の叫びと同時に、前に差し出した手の平より、真っ赤な炎が吹き出す。
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