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悠稀は、その青年に見覚えがあった。 「あなた、上野の……!!」 驚いたように声をあげると、あちらも驚いたように少し表情を変える。 「大樹を呼び捨てにする女なんて、始めて見た」 そう言うと、悠稀をまじまじと見る。 覚えてる。忘れる訳がないから。 悠稀が虐められる原因になった時、大樹の横にはこいつがいた。 「…矢神、悠紫」 名前に自分と同じ文字が使われている、上野の親友。だった筈だ。 「俺の事、知ってるのか。田之上悠稀」 悠稀は、心臓が止まるかと思うくらい驚いた。 誰もこの姿の時に、悠稀だと分からないのに。 「あれだな、地味な格好よりそれの方がいい」 立ち上がって悠稀の近くに来ると、いきなり口の端に何か貼り付けた。 「何をっ!?」 慌てて触ると、それは絆創膏だ。
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