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「馬鹿ね」 悠稀の呟きと、紘子が動くのがほぼ同時だった。 肘で思い切り慶輔の腹を殴りつける。 いきなりの鋭い痛みで、慶輔は紘子を開放して腹を押さえる。 その屈み込んだ隙をついて、紘子の見事な回し蹴りが顔面に決まった。 「……お見事」 ぽつりと、大樹が呟いた。 大の字になって気絶している慶輔を見下ろして、悠紫は携帯で警察を呼ぶ。 慶輔は、数分後に来た警察に捕まって連れていかれた。 「一件落着ね」 にやりと笑う紘子。実は、紘子は襲われても大丈夫なように空手を習っていたのだ。 「すげぇな、紘子」 「ありがとう、大樹先輩」 大樹に褒めてもらえて、嬉しそうに笑う紘子。 そんな紘子を見ながら、悠稀はため息をつく。 「やっぱり迷惑かけたわね」 迷惑なんてかけたくなかったのに、紘子まで巻き込んでしまった。 悠稀は、自分の弱さが嫌で仕方なかった。
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