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「ぼ~っと突っ立ってる先輩が悪いわ」
紘子は半笑いの顔で大樹を指差して言う。
大樹の方は、罰が悪そうに紘子から視線を反らしている。
それに、違和感を感じた。
大樹は、いつも人の目を見て話す人だ。
だから、視線を反らすなんて珍しい。
「どうしたんですか?」
紘子の問い掛けに、大樹は真っ直ぐ紘子を見つめる。
その視線の強さに、紘子はたじろいでしまった。
思っていたよりも強い視線だ。
そんな視線を向けられて、驚かないはずがない。
紘子が心の中でつらつら考えている間、大樹はまた何かを考えているようだ。
「…珍しい」
一つの事でずっと悩む大樹なんて、紘子は見た事がない。
それほどまでに、大切な事なのだろう。
そこまで考えて、ふと嫌な予感が胸を覆う。
「……お願いが、あるんだ」
聞きたくない。なぜか、聞いてはいけないような気がした。
「何、ですか?」
「実は――――」
大樹の言葉を聞いた瞬間、紘子の嫌な予感は見事に的中したのだ。
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