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紘子は、月を見上げながらため息をついた。
今日は、とても綺麗な満月だ。
古から、人々は月には不思議な力が宿っていると信じていた。
今日の月は、それをそのまま表しているような、美しい月だった。
それを見ながら、紘子はまたため息をつく。
ふと、頭に浮かんだのはため息をついたら幸せが逃げるという言葉。
そんな事を考えた自分に、自嘲する。
「……馬鹿みたい。私に幸せなんてこないのに」
今日、大樹に言われた言葉を思い出す。
『悠紫と田之上が付き合わないように、邪魔したいんだ。それに、手伝ってほしい』
大樹は、完全に悠稀に惚れているのだ。
自分が入る隙なんて、全くない。ずっと、大樹は悠稀を見ていた。
「……つらいよ、大樹先輩」
あの時、どうして自分は了承したのだろう。
こんなに悲しい思いをするのなら、断ればよかったのに。
嫌な予感ほど、当たるというのは本当らしい。
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