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それでも了解したのは、多分大樹が本気だったから。
あれだけ真剣な表情で頼まれたら、断れるはずがない。
「どうして……?」
どうしていつも、私は幸せになれないのだろう。
どうして、いつも悠稀が選ばれるのだろう。
徹斗だって、紘子の初恋の人だって、結局は今でも悠稀を愛している。
思い出したくない事を思い出して、紘子は眉を寄せる。
フラれたのは初めてだった。いや、告白自体初めてだったのに。
いつもいつも、自分は悠稀に敵わない。
敵うとも思えないが、どうして大樹まで悠稀を好きになるのだろう。
「私も、損な位置にいるわよね」
悠稀のすぐ側。自分は、悠稀の引き立て役のようなものなのだろうか。
そこまで考えて、紘子ははっと我に返る。
何故、今日はこんなにも暗い考えしか出来ないのだろう。
悠稀に敵わないなんて、だいぶ前から分かっていたのに。
「辛い、よ」
会いたい。会いたい。
大樹先輩に、今すぐ会いたい。
月を見上げながら、紘子は静かに泣いていた。
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