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「おはよう」
悠稀の声が、早朝の図書室に響く。
ソファーに座って本を読んでいた悠紫は、その声を聞いて顔をあげた。
視線の先には、柔らかく笑う悠稀の顔。
「おはよう、悠稀。どうした?」
上機嫌な悠稀にも首を傾げるが、悠稀が朝から図書室に来るなんて。
いや、悠稀が図書室に来る事自体がほとんどなくなっていたが。
「ん~、悠紫に会いたくて」
恥ずかしがる様子もなく言う悠稀。
悠紫にしたら、凄く恥ずかしい内容なのだが。
「そうか。座れば?」
自分の横をぽんぽんと叩いて、悠紫は悠稀に笑みを返す。
悠稀は言われた通り、大人しく座る。
「久しぶりね、図書室は」
周りを見回しながら言う悠稀。
久しぶり。それは、悠稀が辛い思いをしなくなった証拠だ。
本来なら、嬉しいはずなのだが。
悠稀と二人の時間が全くなくなって、悠紫としては素直に喜べない事だった。
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