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悠紫から香る香水の匂いが、悠稀は好きだ。
これほど近くにいるのだから、いつも以上に分かる。
この香りに包まれているような、甘い錯覚さえ感じる。
有り得ない話しだとは分かっているのだが、悠稀には悠紫と恋人同士になっているように思える。
「……悠紫、いい匂いね」
無意識に呟いて、昨日の徹斗の事を不意に思い出した。
いい匂いだと言った徹斗に、悠稀は変態と言ってしまったのだ。
こんな幸せな気分に浸っているのに、自分はやっぱり変だ。
幸せなのに疑ってしまう。
裏切るはずのない、徹斗の方に意識がいってしまう。
くすりと笑った悠稀に気付いて、悠紫が不思議そうに首を傾げた。
「何でもないわ。ただ、ちょっと徹を思い出して」
悠稀の言葉に、悠紫は嫌がるように身じろぎをする。
「お前は……」
ため息と共に出た呆れたような声を聞いて、悠稀は混乱する。
自分は、悠紫が呆れるような何かをしただろうか?
何もしてないはずなのだが。
混乱している悠稀を見て、悠紫はばれないようにため息をついた。
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