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悠紫はその手の感触を、目を瞑りながらゆっくりと楽しんでいた。
悠紫にしたら、悠稀と共にいられるこの時間以外は、何もいらない。
徹斗も紘子も、大樹でさえもいらないのだ。
悠稀は、そんな事は全く気付いていないのだが。
「悠紫、本当に寝ちゃったのかしら」
突然、悠稀の声が悠紫の耳に入ってきた。
悠稀は、悠紫の顔を覗き込んでいるようで、悠紫の顔に影がかかる。
ゆっくりと悠紫が目を開けると、思っていた以上に悠稀の顔が近くにあり、少し驚いた。
「あら、起きてたの?」
目の前にある悠稀の顔が、柔らかい笑みを浮かべている。
二人でいる間に流れる、優しい時間。
悠稀にも悠紫にも、かけがえのない大切な時間なのだ。
「……悠稀」
悠紫の腕が、悠稀の白い顔に伸ばされる。
そっと頬に手をあてて、悠紫は小さく笑う。
「おはよう、悠稀」
「おはよう」
こつんと額を額に当てて、二人同時に微笑んだ。
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