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だが、そんな平穏な時もすぐに消え去った。 「悠紫!」 ばたん、と扉を乱暴に開けて、大樹が悠紫と悠稀のいるソファーに向かって走ってくる。 そして、悠稀と悠紫が共にいるのを見て、一瞬ぴたりと固まった。 「田、之上。今授業中だろう?」 引き攣った笑みを浮かべながら、大樹が問う。 悠稀は大樹の様子に首を傾げながら、苦笑を浮かべた。 「今日は、ずっと悠紫と一瞬にいるの」 ね、と横にいる悠紫に微笑みかける悠稀。 だが、悠紫は真っ直ぐ大樹を見つめている。 「悠紫?」 「あぁ、なんでもない」 悠紫は取り繕うように微笑んで、悠稀の頭を撫でる。 悠稀が気持ち良さそうに撫でられているのを見て、大樹の表情はますます引き攣った。 「俺、帰るわ」 何故か二人の邪魔をする事が出来なくて、大樹は逃げるように出ていく。 そんな大樹をじっと見つめながら、悠紫は小さくため息をつく。
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