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それでも、何故か仲良くなれるのではないかとも思うのだ。 彼が自分とそっくりだから、仲良くなれる気がする。 まぁ、相手は仲良くする気などないだろうが。 「悠稀、出かけるぞ」 「えぇ!?」 黙り込んでいた悠紫の邪魔をしないように静かにしていた悠稀は、いきなりの悠紫の言葉に目を見開いた。 「いきなりすぎるわ。どういうつもり?」 見開いた目は、みるみる細められていく。 まるで、悠紫を怪しんでいるかのように。 悠紫はその目を楽しそうに見ながら、悠稀の問いに答える様子がない。 その代わり、悠稀の細い腕を掴んで走り出す。 「ちょっと、悠紫!」 悠稀の言葉にも耳を傾けず、悠紫はただ走る。 そうしているうちに、悠稀も諦めたのか静かになった。 「どこ行くの?」 それでも、やはり行く場所を気にしているようで、たびたび問い掛けてくる。 だが、いくら問い掛けても悠紫は答えない。 「いいところ、だな」 それくらいしか答えない悠紫に、悠稀はため息をつく。 「いいところって、どこよ」 呟く声が聞こえるが、悠紫は聞こえないふりをしていた。
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