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しばらく悠紫は帰って来なかった。
「退屈」
そう言うと、悠稀は自販機で買っていた飲み物の缶を真後ろに放り投げる。
その缶は綺麗な孤を描き、ごみ箱の中に入った。
だが、悠稀は全く見向きもしない。
ただ、不機嫌そうに顔をしかめているだけだ。
と、耳にバイクの音が聞こえてくる。
「……うるさいわね」
睨み付けるように音に目を向けた悠稀は、驚きに言葉を失う。
「お待たせ、悠稀」
バイクに乗っていたのは、悠紫だった。
「悠紫!なんでバイクなんて持ってるの!?」
悠稀の驚いた顔を見て、悠紫は笑う。
そのまま悠稀に近寄ると、そのさらさらの髪を掻き分けてヘルメットをつけた。
「きゃあ!」
驚く悠稀の手を引いて、悠紫はバイクまで歩いていく。
「ちょっと遠出するからな。バイクの方がいいだろ」
悠紫はそう言うと、自分の後ろに悠稀を乗せた。
そのまましっかりとハンドルを握ると、悠稀の方を見る。
「しっかり捕まれよ」
バイクが大きな音と共に走り出す。
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