19

15/20
前へ
/373ページ
次へ
悠稀は悠紫の腰に手を回しながら、じっくり周りを見回していた。 今悠紫と悠稀が走っているのは、自然豊かな道だ。 ここまで来ると、いくら悠稀でもどこに行くのかくらいは分かる。 「悠紫、海についても私水着ないわよ」 「あぁ、じゃあ泳がなければいい」 何のために来たの?という悠稀の問い掛けに、悠紫ほんの少し微笑んで秘密だ、と言う。 悠稀にしたら、早く教えて欲しくてうずうずしているのだが。 しばらく走らして、悠紫はある場所でバイクを止める。 「うわぁ、綺麗」 悠稀が普段来ていた場所と違う、静かな場所。 「俺が見つけた、穴場みたいな感じだ」 ここに連れて来たかったんだ。 悠紫は悠稀の手を取って、ゆっくりと海岸に下りていく。 悠稀は足元に気をつけながら、悠紫に着いて行こうと必死だ。 「早いか?」 ゆっくり歩いていたつもりなのだが、やはり慣れない悠稀にはきついのだろうか。 「平気よ」 だが、悠稀は楽しそうに笑いながら悠紫のすぐ横に来る。 そのまま、同じ速度で海岸まで下りていく。 「凄く静かな場所ね」 誰もいない、ただ波の音が響くだけの場所。 悠稀は、すぐにこの場所が好きになった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加