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「え?」 「だから、忘れられない元カノがいるんだって」 水綺の言葉を聞いて、悠稀の顔がみるみる青くなっていく。 心配そうに悠稀を見る水綺に気付いて、悠稀は小さく笑う。 「ごめん、その話詳しく聞かせて?」 水綺はただ驚いた。 普通、好きな人の忘れられない人を知りたいなんて思うだろうか。 「知りたいの?」 「知りたい」 思った以上にはっきりと口にした悠稀を見て、水綺は苦笑する。 どうせ彼女の事だ、教えなければ教えるまで付き纏ってくるのだろう。 なんというか、本当にいい性格をしている。 「男らしい性格よね」 「最高の褒め言葉ね」 水綺の皮肉を笑顔でかわしながら、悠稀の目は本気だ。 「そうね、いずれ誰かから聞くと思うから教えておくわ」 そう言うと、水綺はとりあえず近くにあるベンチに腰掛ける。 悠稀が同じように腰掛けるのを見てから、水綺の視線は一人で海を眺めている悠紫に注がれた。 「矢神先輩には、中学から高校まで付き合っている人がいたの。その娘の名前は、上野羽都」 上野。聞いた事のある苗字に、悠稀は息を呑む。 水綺はそんな悠稀を見ながら、一度頷く。 「そうよ。矢神先輩の元カノは、上野大樹の妹なの」
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