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ただただ、悠稀は驚くだけだった。
大樹に妹がいるのも知らなかったし、なにより悠紫にそんな人がいたなんて。
自分は、もしかしたら二人の事を何も知らないのではないか。
誕生日は?血液型は?
……考えても、答えはでない。
いつも側にいてくれているから知っていたつもりなだけで、自分は大樹の事も悠紫の事も、全く知らないのだ。
「悠稀?」
「水綺、私あの人達の事何も知らないの」
視線は悠紫を捕らえたまま、悠稀は無表情。
それでも、水綺にはわかる。
彼女の瞳の奥には、悲しみがあるのだ。
何も知らない、何も教えられていない事が悠稀には辛い。
あんなに側にいたのに、なんで。
「……悠紫」
切なそうに、辛そうに。
悠稀が悠紫を呼ぶ。
当たり前だが、悠紫は気付かない。
「聞かなきゃよかった?」
そんな二人を見ていられなくて、水綺が声をかける。
すぐに表情を切り替えた悠稀は、小さく笑った。
「いいえ、聞いてよかった」
叶わない思いだという事だけでも、気付く事ができたから。
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