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三つ編みに黒縁眼鏡をかけている少女は、廊下を凄い勢いで走っている。
この腐っている世界の中にある、唯一の安らぎの場所へ。
(もう、少し)
だが、少女の望みは叶わなかった。
「あらぁ、田之上さん。そんなに急いでどこに行くの?」
小ばかにしたような声と共に、目の前に2、3人の女子が出てきた。
「……あ」
怯えたように声を上げた少女を見ながら、1番前に居た女子が手を振り上げる。
ぱしぃんと音がして、少女の体が廊下に倒れる。
「いい気味ね、悠稀(ゆき)」
「…ひ、紘子(ひろこ)」
怯えた目で見上げてくる悠稀を睨み、紘子は悠稀を蹴りつける。
それを見ていた他の女子も仲間に入り、気が済むまで殴ってから姿を消した。
全員が居なくなってから、悠稀は無表情で立ち上がると体についた埃を払う。
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