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悠紫は、気付いたら走り出していた。
「悠紫!?」
悠稀の驚いたような声が聞こえるが、悠紫は立ち止まらない。
停めていたバイクのところまで走っていくと、悠紫は悠稀が来るのを待つ事もせずに走り出す。
「待って!」
悠稀がバイクのところまでたどり着いた時には、もう走らせた後だった。
「……悠紫」
悠稀はただ、バイクがあった場所に立ちすくむ。
「悠稀、とりあえず出水君呼べば?」
気を使ってくれたのか、水綺がやんわりと悠稀の肩に手を置いて提案する。
「……そうね」
諦めたように笑みを浮かべた後、携帯を取り出して徹斗に電話をした。
『もしもし?』
「徹?お願いがあるの」
そう言うと、悠稀は水綺から聞いた場所を教える。
『分かった、すぐに行くよ』
しばらく、悠稀と水綺は海岸沿いに座りながら無言だった。
「悠稀?」
後ろから、遠慮がちな声が聞こえてくる。
「徹」
後ろを振り向いた悠稀は徹斗の姿を見て、小さく笑う。
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