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「早かったのね」
「悠稀、悲しそうな声してたから。親父のバイクパクって慌ててきた」
自慢気に胸を反らす徹斗に、悠稀は呆れたように笑う。
「馬鹿。誇る事じゃないわ、無免許じゃない」
悠稀の的確なツッコミに、徹斗はしゅんとうなだれる。
それが怒られた犬のように見えて、悠稀は徹斗の頭を撫でた。
見た目と違い、ふわふわした触り心地のいい髪。
「悠稀?」
なかなか髪から手を離さない悠稀に、徹斗は遠慮がちに声をかける。
「……悠稀、帰った方がいいわ」
やんわりと水綺が悠稀の肩に手をおく。
それでようやく徹斗の髪から手を離した悠稀は、一度水綺を見て微笑む。
「ありがとう、水綺」
「いいえ」
水綺の返事を聞いた後、悠稀は徹斗の後ろについて行く。
近くに停めていたバイクの後ろに乗る悠稀に、徹斗は優しくヘルメットを付けた。
「ありがとう」
聞こえてきたお礼に小さく笑うと、徹斗は前に乗る。
「行くぜ、悠稀。しっかり捕まっとけよ!」
そう言うと、いきなりアクセルを全開にして走り出す。
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