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悠稀は最初、いきなり飛ばす徹斗の背中に驚いてしがみついていたが、慣れてきたのか周りを見回したりと楽しそうだ。
「凄い、この辺ってこんなに綺麗なのね」
「そうだな、まぁ都会に比べたら結構田舎の方だし」
自然豊かな場所をバイクで走るのは少し悪い気もしたが、徹斗はすぐにでも家に帰りたい。
なにがあんなに悠稀を悲しそうにさせたのか、はっきりと知りたいからだ。
「なぁ、悠稀?」
「ん~?」
徹斗の問い掛けに答えながら、悠稀はまだ周りを見回す。
この景色がとても気に入ったようだ。
「なんであんなところに?悠稀一人で来た訳じゃないだろ」
徹斗がそう言うと、悠稀の動きがぴたりと止まる。
そのまま、言うか言わないかで迷っているようだった。
「悠稀」
「実はね、悠紫に連れて行ってもらったの」
悠紫、という言葉に反応して、徹斗が少し身じろぐ。
「で、その矢神先輩は?」
「それが……」
さっきまでの事を徹斗に全て話した悠稀は、話さなければよかったと後悔した。
話し終えてから、一言も徹斗が話さなくなったから。
「徹?」
恐る恐る話しかけても、全く答えてくれない。
それからは悠稀も徹斗も、家につくまでずっと無言だった。
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