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「徹、徹っ!」
徹斗の名前を呟きながら泣きじゃくる悠稀を、優しく撫でてくれる。
「とりあえず、中入ろう」
外ではあまりにも目立ちすぎるから。
そう思って、徹斗は悠稀をやんわり抱きしめたまま、家の中に入る。
中に入ってもなお、泣き続ける悠稀。
そんな悠稀を見て、徹斗は少しずつ不機嫌になる。
原因は、もちろん悠紫だ。
これだけ悠稀に思われていたのに、あいつは悠稀を裏切った。
悠紫は絶対に、許さない。
「悠稀、ここは寒いから風邪引くよ」
「きゃあ!」
軽々と、徹斗は悠稀を俗に言うお姫様だっこで部屋まで運ぶ。
流石に泣きじゃくる訳にもいかず、涙で濡れた瞳を丸くして悠稀は驚く。
「泣き止んだ?」
階段を上がりながら、徹斗は悠稀の方に顔を向ける。
目があった瞬間、悠稀の表情が真っ赤に染まり顔を逸らした。
「悠稀?」
「泣き止んだわ、大丈夫」
不思議そうに聞く徹斗だが、悠稀は頑なに目を合わさない。
目を合わせない。合わせる事が出来ない。
男らしい徹斗を見て高鳴る胸に戸惑いながら、悠稀はただ下を見つめていた。
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