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悠紫はただ、がむしゃらに走っていた。
羽都が行きそうなところは全て回ってみたが、どこにもいない。
悠紫は焦っていたのだ。
羽都が居なくなったのは、自分のせいだから。
「くそっ!」
何であの時、羽都に会ってしまったのだろう。
あの時、羽都と話す事をしなかったら、家出なんて。
今の悠紫の頭の中には、悠稀の事などかけらもなかった。
ただただ、羽都の無事を祈るだけ。
「悠紫!」
気付いたら、悠紫は大樹の家の近くまで来ていた。
家の中から大樹がバイクに乗って出て来る。
「羽都は?」
「見つからない」
大樹は悠紫の返答を聞いて、唇を噛む。
悔しそうな大樹の表情を見て、悠紫の胸が締め付けられる。
大樹は、あんなでも悠紫の親友なのだ。
そんな彼の辛そうな表情なんて、見たくない。
「お前、どうして、いつ羽都に会った?」
いきなり、大樹が低い声で悠紫を問い詰める。
「答えろ!」
「……前に大樹の家に行った時だ。羽都は、大樹に言われたから迎えにきたと言っていた」
悠紫の言葉に、大樹の表情は凍り付く。
まさか、嘘までついて悠紫に会いに行くなんて。
「羽都の馬鹿やろう」
そこまで、彼女は悠紫を思っているのか。叶わないのに、ずっと。
「早く見つけないと。羽都の婚約者の方達も探してるんだ」
婚約者。その言葉は、いつ聞いても胸が苦しくなる。
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