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「とりあえず、羽都が行きそうなところは全てあたってみた」
「サンキュー。だけど、本当に羽都はどこ行ったんだよ!」
羽都の部屋から失くなったのは、財布だけだ。
ただ、財布の中にあるカードは置いていっているので、カードでの場所の特定は不可能。
現金も随分入っていたようだから、なかなか大変だ。
「せめて現金が少なかったらなぁ」
「それなら、すぐに帰ると思うけどな」
二人が一斉にため息をつく。
だが、そんな事をしていても羽都が見付かる訳ではない。
すぐにバイクのエンジンをかけて、同じ方向へと走り出す。
「手分けして探そう。その方がいい」
「了解。見付けたら電話な」
携帯をちらちら見せながら、大樹は悠紫と違う方に走る。
その大樹が見えなくなるのを確認して、悠紫は大樹と反対側へ向かう。
「……羽都」
切なげに呼ばれた名前に、答える相手は今はいない。
随分前から、この名前に答えてくれる少女は隣には居なかった。
ただ、ぽっかり開いた心の穴を塞いでくれる少女は、確かにいる。
「悠稀」
だけど、自分はその彼女を傷付けた。
「あんな遠い場所に置き去りにするなんて、最低だな」
自虐的な笑みを浮かべながら、悠紫は悠稀の事を追い払う。
今はただ、自分の愛しい少女を探さなければいけない。
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