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「……なんで、隠すの?」
悠稀の声が震えている。
驚いて悠稀の方を見ると、悠稀は今にも泣きそうな表情。
「悠稀?」
「なんで隠すの?隠さないで言えばいいじゃない!忘れられない人のところに行ってたって!」
その言葉に、悠紫だけではなく大樹まで驚いたようだ。
「なんでそれを?」
「紘子、田之上に言ったのか?」
悠紫が呆然と呟いて、大樹は慌てて紘子に確認する。
だが、紘子は首を横に振るだけ。
「やっぱり、そうなんだ。ただの勘だったんだけど、当たるものなのね」
疲れたような笑みを浮かべて、悠稀は悠紫を見る。
「別に、ちゃんと言ってくれたらいいのに。なんで隠すんですか?」
「悠稀が、傷付くと思って」
悠紫の言葉に、悠稀の目が鋭くなる。
「傷付く?なんで私がそんな事で傷付くんですか」
悠稀の言葉に、悠紫の心がずきずき痛む。
自分は、悠稀が少し好意を持ってくれていると思っていた。
それが恋愛ではないとしても、悠稀は慕ってくれていると。
なのに、自分はただの自意識過剰だったのだろうか。
「……悪い」
「私、一人で食べるわ」
悠紫の言葉を思いきり無視をして、悠稀はかばんを持つと屋上から出ていく。
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