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「何、したんですか」
紘子が、呆然としながら悠紫に問い掛ける。
「悠稀から聞かなかったのか?」
悠紫が目を見開きながら、紘子の方を向く。
悠紫の問い掛けに、ただ紘子は首を振るだけだった。
「何も聞いてませんよ」
という事は、悠稀は紘子には昨日の事を話していないのだろう。
悠紫は昨日の事を、話せる範囲で二人に聞かせた。
それを聞いた紘子は、呆れたような表情のまま悠紫を見る。
「馬鹿ですね」
そう一言、紘子はため息と共に呟く。
悠紫は否定する事もなく、ただ苦笑いを浮かべているだけ。
「あなたは、悠稀を裏切ったんですか?」
「裏切ってなんか、ない」
悠紫の弱々しい声を聞いても、紘子は全く気にせず強い調子で責め立てる。
「あなたが連れ出したくせに、あなたは悠稀をおいてった。裏切ったのと同じ事よ」
だから、悠稀にも愛想を尽かされるんだ。
紘子の言葉が胸に突き刺さる。
「あなたは悠稀か大樹先輩の妹、どっちを選ぶの?」
いきなり突き付けられた選択に、悠紫は息を呑んで黙り込む。
「悠稀には、別にあなた以外にも大切に思ってくれる人がいる。だから、あなたが大樹先輩の妹を取るならあまり悠稀に近寄らないで」
今の悠紫には、二人のうちのどちらかを取る事なんかできない。
紘子は、それを分かっているのに問い掛けているのだ。
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