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すぐにどちらかを選ぶなんて、無理だ。
ただの欲張りなのはわかっているけど、やっぱり手放せない。
側にいて安心出来る悠稀と、ずっと思い続けてきた羽都。
この二人のどちらかなんて、悠紫には選べない。
「早く決めた方がいいですよ。中途半端は二人とも傷付けますしね」
紘子は、悩んでいる悠紫の事を全く気にする気がないようだ。
大樹は大樹で、苦笑を浮かべたまま二人のやり取りを黙って聞いている。
まぁ、大樹にしたら悠紫が羽都を取れば嬉しいのだろうけど。
今はまだ、悠稀を手放す勇気もない。
「考えとく」
結局、曖昧な返事しかできない自分が嫌になる。
でも、紘子は一応納得してくれたようだ。
問い詰められなくなって、悠紫は安堵する。
これ以上聞かれたら、何も答えられなくなりそうだった。
「とりあえず、今は悠稀ですよ。隠したのはまずかったと思いますよ」
「あぁ。また帰りにでも謝るつもりだ」
やっぱり、悠稀が側にいないと落ち着かない。
だから早く謝って、いつもみたいに悠稀が側にいてほしい。
今は、それだけで十分だ。
学校が終わったら、居なくなった羽都の捜索をする。
だからせめて、学校だけは安らぎの場所にしたかった。
「自分が悪いんだけどな」
自分の考えに、思わず苦笑が浮かぶ。
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