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それでも、やっぱり羽都が大事だったから。
「もう、いいだろ。帰る」
「……逃げるの?」
紘子の言葉に一旦立ち止まるが、悠紫は何も言い返さずに図書室を出ていく。
「あらら、行っちゃった」
紘子は、一人でソファーに座り込む。
悠紫は、もう駄目だ。悠稀の側におくつもりはない。
今の悠稀には、徹斗が側にいるのが1番いいのだろう。
「まぁ、どうかは分からないけど」
悠稀の本心は分からない。
本当は、悠紫にいてほしいのかもしれないが。
それでも、謝ってこない悠紫に嫌気がさしているのだろう。
「可哀相」
二人とも、可哀相だ。
お互いがすれ違ったまま、違う人のところへ行く。
お互いがお互いを忘れられないのに、それを覆い隠して。
ただ、そんな事をしても無駄なのに。
二人とも、無駄に頑固だから。
「周りががんばらないとね」
大樹の計画に参加するとは言っていたが、自分はやはり悠稀が1番。
「ごめんなさい、大樹先輩」
小さく呟いて、紘子は図書室を後にする。
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