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悠稀の家には、誰もいなかった。
「あれ、柑奈さんは?」
「母さんは、今日は昔の仕事仲間と飲み会」
徹斗にそう答えながら、悠稀は慣れた手つきで風呂の準備をする。
「ごめん、ちょっと時間かかるけど」
「大丈夫ですよ。すみません、迷惑かけて」
うなだれる少女に、悠稀は笑う。
「そんな事ないわ。私が好きでやってる事よ」
悠稀の言葉に、少女は安心したように笑みを浮かべる。
しばらくすると風呂が沸いた事を教える音がして、悠稀は少女に風呂場を教えた。
「着替えは私のを貸すわ。服は洗濯ね」
てきぱきと指示を出すと、悠稀はすぐ洗濯に取り掛かる。
洗濯機を回している間に、今度は晩ご飯を作りはじめた。
「悠稀、何してるんだ?」
「徹も食べてく?」
質問に質問で返されて、徹斗は少し不機嫌そうな表情。
「食べてくじゃなくて、泊まる」
「わかったわ。じゃあ三人分ね」
悠稀は、家事全般に慣れているようだ。
風呂を沸かしたり洗濯をしたり、料理も出来るし掃除も好き。
それは多分、忙しい母親と今はいない父親が原因なのだろう。
徹斗がぼんやり考え事に耽っている間に、悠稀はさっさと料理を作り終えたようだ。
「完成」
目の前には、綺麗に盛り付けをされた美味しそうな料理がたくさん並んでいる。
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