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「あの、お風呂ありがとうございます」
ちょこんと、ソファーに座って少女が頭を下げる。
悠稀は、くすくす笑いながら手招きした。
「いいから、こっちに来たら?」
「え、でも」
目の前に並ぶ料理を見て、少女は困惑気味だ。
まぁ、誰だって知らない人の家に転がり込んでお風呂を借りたあげく、料理まで準備されていたら戸惑う。
徹斗は少し苦笑を浮かべながら、同じように少女を手招く。
「そんなに気にしない方がいい」
「そうよ。それにもう作っちゃったわ」
その悠稀の言葉に、少女はやはり怖ず怖ずと悠稀達のそばに来る。
「いただき、ます」
「どうぞ」
悠稀の言葉を聞くか聞かないかのうちに、少女は黙々と食べ始めた。
どれだけ長い事食べてないのだろうか。
凄い勢いに、悠稀も徹斗も少し困惑する。
「凄い食べっぷりね」
「……あぁ」
彼らの会話を聞いていない少女は、ぺろりと平らげた。
「おかわり!……って、あ」
元気よく茶碗を悠稀に差し出した後、ようやく我に返ったのかそのまま固まってしまう。
「はいはい」
その固まった少女の手から茶碗を受け取ると、悠稀は小さく笑った。
「なんか、徹がもう一人いるみたい」
そんな事を言われて、徹斗の表情が膨れる。
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