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後ろを振り向いた悠稀の視線の先には、悠紫を見つめた遙の姿。 「……遙?」 どうしたの? その問い掛けは、声にならないまま消えた。 「羽都!」 何故なら、悠紫が叫びながら遙を抱きしめたから。 「え?」 悠紫が遙に叫んでいた名前を聞いて、悠稀は愕然とする。 『羽都』。それは大樹の妹で、悠紫の思い人。 何故彼女がこんなところに? 「悠稀、騒がしいけど何が……」 2階から降りてきた徹斗を見た瞬間、悠紫は羽都を抱きしめていた腕を解く。 「お前、なんで?」 悠稀の家に泊まっているのか。 そう聞きたいのだと感づいて、徹斗はにやりと笑う。 「俺、これからはほとんど悠稀の部屋に泊まるんですよ」 羨ましいだろうとでも言いたげな徹斗の言葉に、悠稀は笑った。 「馬鹿ね、もう悠紫は泊まりには来ないんだから威張る事もないでしょ」 泊まりに来ない。その言葉が、悠紫の胸を刺す。 避けられる事は分かっていたし、自分はもうこれ以上悠稀に関わらないという事も自分が決めた事だ。 なのに、なぜか苦しい。 それでも自分の側にいる羽都を見ていると、どうしようもなく愛しさを感じる。 もう一度抱きしめると、視線を感じて悠稀がこっちを見ているのがわかった。
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