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気まずくなるくらいなら、自分の気持ちを閉じ込める。 もっといいタイミングを見計らって、悠稀に想いを伝えたい。 だからそれまでは、絶対に伝えないつもりだ。 「さて、帰るか」 早く帰らないと、悠稀が心配する。 だから帰ろう、悠稀のところへ。 すくっと立ち上がったところで、見慣れた人を見付けた。 「立花!」 名前を呼ぶと、怪訝そうな顔で紘子が徹斗に目を向ける。 「……あら、出水」 「何してんだ?」 駆け寄って紘子と並ぶ。 紘子はそれを見て、小さく笑った。 「これ?弟達のご飯よ」 中に入っていたのは、たくさんの材料だ。 「あぁ、お前ん家親両方働いてるんだよな」 徹斗の言葉に苦笑しながら、紘子は不意に顔をあげる。 「出水、お迎えよ」 「え?」 同じように顔をあげた視線の先には、悠稀の姿。 少し息を切らしている姿を見ると、慌てて出てきたようだ。 「徹、こんなところにいた……!」 長々と、安堵の息を吐く悠稀。 それに少し罪悪感を感じて、徹斗は素直に悠稀の元に歩く。 悠稀は紘子を見て、その後すぐに荷物を見る。 「伊月(いつき)君に?」 「えぇ、高校生なのに全く動かないから困るわ」 ため息混じりの紘子の言葉。 悠稀は苦笑しながら、がんばってと声をかける。
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