22

14/14
前へ
/373ページ
次へ
その場で紘子と別れると、悠稀はすぐ徹斗を見る。 その瞳に責めるような色がない事を確認して、とりあえず徹斗は安心した。 あの事はばれていないようだ。 「どうしていきなりいなくなるの」 心配したんだから。 そう言われて、徹斗は曖昧な笑みを浮かべる。 「ごめん、ちょっと外に行きたくて」 半分本当だ。だから、徹斗はそう言う。 すると、悠稀は心底呆れたようなため息を吐く。 「なら、手紙を置いていくとかメールするとか、とりあえず心配しないように何かするのが礼儀でしょう」 悠稀の言っている事は正しいから、徹斗は何も言い返せない。 というより、悠稀の言う方法など全く考えつかなかっただけなのだが。 「これからは、気をつける」 「当たり前よ」 本気で心配してくれている悠稀に、ただただ徹斗は申し訳なかった。 こんなに心配をしてくれている悠稀に、嘘をつく事が。 やっぱり、あんな事をしなければよかった。 「徹、帰りましょう?」 それでも、悠稀の笑顔を見たらすぐにどうでもよくなってしまう。 差し出された手をとりながら、徹斗は笑った。 悠稀が悠紫と仲直りをした事は少し気になるが、やっぱりこうやって1番悠稀の側にいられるのは自分だ。 悠紫の側には羽都がいるのと同じように、悠稀の隣にずっといるのが自分になれるように。 「……がんばろう」 徹斗は小さく小さく呟いた。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加