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「俺は、最後になんてしたくない」
悠紫は羽都に手を伸ばし、自分の方へ引っ張る。
だが、羽都は冷静に悠紫から体を離す。
「あのね、悠紫。あなたは間違えてる」
2、3歩後ろに歩いていき、羽都は笑う。
「あなたが私に抱いていた思いは、私があなたに抱いていた思いとは別物なの」
「どういう事だ?」
いきなり何を言い出すのか。
悠紫の表情からそれを感じ取って、羽都の表情が真顔になる。
「悠紫は、ただ勘違いをしていただけ」
そんな事をいきなり言われても、悠紫には訳がわからない。
ずっと羽都の事を思っていたのに、彼女はそれを否定するのか。
「……俺、は」
羽都の事が、大切だ。ずっと、側にいたいと思っていたのに。
そう言うと、羽都は悲しそうに笑う。
「私、実は付き合っている時から気付いてた。だって悠紫、付き合っている時から一度も好きだって言ってくれなかったから」
告白された時だって、悠紫は好きだなんて言っていない。
それに気付いた時、羽都は悲しくなった。
思っているのは自分だけ。彼が自分に抱いていた感情はただ、妹などに抱く感情だったのだ。
「悠紫、もう気付いてるでしょう?ただ、認めたくないだけ」
羽都の言葉を聞いて、悠紫の心臓が嫌に跳ねる。
羽都に心の中を読まれたような、そんな感じがしたのだ。
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