23

6/9
前へ
/373ページ
次へ
「……そうだな。そうした方がいいか」 羽都が、新しい道を歩いていくために悠紫に会いに来たように。 自分も歩いていこう。 思い出は思い出のまま、色褪せる事なく残り続けてくれるから。 自分は何も悩まず、何も恐れず。 ただ真っ直ぐ悠稀に向かっていこう。 「ありがとう、羽都」 彼女がいなかったら、多分自分は自分のまま。 進む事も出来ないままだったのだろう。 「いいえ。悠紫はただ、いきなり私が会いに行くって教えてもらったから、昔を懐かしく思っただけなのよね」 「そうなのかもな」 羽都には感謝しなければ。 悠紫でも気付かなかった事を、この少女は見抜いていた。 「ありがとう」 「もう、何回言えば気がすむのよ」 悠紫のお礼に、羽都は苦笑を浮かべる。 そして、ふと思い出したように悠紫の方を向く。 「私に感謝しているなら、悠稀さんと幸せになって」 私にとって、悠紫の幸せが私の幸せでもあるから。 そういって微笑んだ羽都の表情は、どこか吹っ切れたような笑み。 そんな表情を浮かべている羽都は、とても綺麗で。 悠紫は思わず見とれてしまう。 「あぁ、約束する。絶対に悠稀と幸せになるから」 羽都と叶わなかった未来を、悠稀と歩むのもいいかもしれない。 羽都はああ言っていたが、自分は少しずつだが確実に羽都を好きになっていたと思うのだ。 ただ、それはもう昔の感情。 今は羽都の幸せを、心から願っている。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2034人が本棚に入れています
本棚に追加