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「……そうだな。そうした方がいいか」
羽都が、新しい道を歩いていくために悠紫に会いに来たように。
自分も歩いていこう。
思い出は思い出のまま、色褪せる事なく残り続けてくれるから。
自分は何も悩まず、何も恐れず。
ただ真っ直ぐ悠稀に向かっていこう。
「ありがとう、羽都」
彼女がいなかったら、多分自分は自分のまま。
進む事も出来ないままだったのだろう。
「いいえ。悠紫はただ、いきなり私が会いに行くって教えてもらったから、昔を懐かしく思っただけなのよね」
「そうなのかもな」
羽都には感謝しなければ。
悠紫でも気付かなかった事を、この少女は見抜いていた。
「ありがとう」
「もう、何回言えば気がすむのよ」
悠紫のお礼に、羽都は苦笑を浮かべる。
そして、ふと思い出したように悠紫の方を向く。
「私に感謝しているなら、悠稀さんと幸せになって」
私にとって、悠紫の幸せが私の幸せでもあるから。
そういって微笑んだ羽都の表情は、どこか吹っ切れたような笑み。
そんな表情を浮かべている羽都は、とても綺麗で。
悠紫は思わず見とれてしまう。
「あぁ、約束する。絶対に悠稀と幸せになるから」
羽都と叶わなかった未来を、悠稀と歩むのもいいかもしれない。
羽都はああ言っていたが、自分は少しずつだが確実に羽都を好きになっていたと思うのだ。
ただ、それはもう昔の感情。
今は羽都の幸せを、心から願っている。
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